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コラム/ データ活用に関する一考察 第7回

中小企業診断士 福田 美詠子


2. 日本のデータ活用を考える
(3)日本の文化を強みとしたデータ活用へ

 日本文化の良い点を強みにしてデータ活用ができる組織になっていくことを考えます。

◆組織の価値観を変えるデータドリブン経営

 データドリブン経営が、組織の価値観に変革をもたらす可能性があります。具体的には(1)データ活用権限の拡大による分権化 (2)データ仲裁機能による組織融和 (3)省力化・自動化による業務変革 です。

(1)データ活用権限の拡大による分権化

 データを共有することがメンバーの参加意識を強めます。QC活動は典型例で、データに基づいて自分の業務を改善していく分権的な運営は、日本の企業がもともと得意とするところです。データへのアクセスと分析を簡便にできるようにしておいて、現場に近い担当者が迅速にデータ確認をするようになると、生産性向上にもつながります。
 また、上層部が部下に欲しいデータを頼んで資料を作成させることは、スピードを損なったり、内向きの作り込みを招いたりする恐れがあります。データを簡便に見る仕組を入れてセルフサービスにすると、組織のフラット化に通じます。

(2)データ仲裁機能による組織融和

 組織内で意見が対立しやすく、力関係で採否が決まる場合があります。これは、各担当者が「狭く深く」自分の業務を知っているのですが、担当する領域が違う人と意見が異なる場合によく起こります。それぞれの主張は各担当業務では正しいので、あとは力が強い人がやりたい方向で決まってしまうわけです。
 「広く」データを取って担当業務別に分析・比較してみると、全体を俯瞰してそれぞれの主張を相対化することができます。これはデータが中立の客観的な現実を示しているからできることです。もちろん、データをどう解釈するかは人が決めるので、組織の力学や主観は残りますが、組織内の誰かが調整するのではなく、データを拠り所にすることで、公平性を保つことができます。

(3)省力化・自動化による業務変革

 データ活用型のなかでも②体育型は、多くの業務で導入可能で、主に定型業務の省力化・自動化などの効果をもたらします。IoT、ロボット、RPAなどが導入されれば、業務も大きく変わってきますし、業務が変われば人も変わってきます。そして②体育型は、日本が得意とするデータ活用型です。

◆大幅に安く使いやすくなったIT導入で、一気に先端へ

 データ活用は組織力を上げますが、とにかくITが導入されなければデータは使えません。IT導入に抵抗がある理由として、「以前にIT投資をしたが使いこなせなかった」という声を聞きますが、今のITは大幅に安く、直感的な操作で使いやすくなっています。高価で多機能のパッケージをカスタマイズして導入するよりも、タブレットやPCに欲しい機能だけのアプリをダウンロードして使う形が広まってきました。
 たとえば、独立行政法人 中小企業基盤整備機構は「ここからアプリ*13」というサイトで、「生産性向上でお困りの中小企業・小規模事業者が、使いやすい・導入しやすいと思われる業務用アプリを紹介」しています。
 あまりIT化していない中小企業は、旧型のレガシーシステムのしがらみがなく、リープフロッグ現象(馬跳び)で一気に先端技術に到達できる可能性があります。

◆ITのインパクトを把握することは、これからの企業経営に必要なスキル

 データ活用・ITは、人事・総務・経理、あるいは管理職の類と同じく、どの業種・職種でも関係します。しかも変化が激しく、ITの経営へのインパクトを把握できることは、これからの企業経営に必要なスキルだといえます。
 IT系のニュースや政府施策には目配りをして、定期的に把握することをお勧めします。必ずしも技術が分からなくてもよく、ITの用途とコスト、自分の業界内の導入状況など、ビジネスへの影響を中心に情報を集めましょう。もちろん、技術動向が分かればなお良いです。基本を体系的に学ぶには、社内で資格・検定試験の取得を推奨することも役立ちます。「経営に役立つIT利活用に向け、経営者の立場に立った助言・支援を行い、IT経営を実現する」ITコーディネータのような資格もあります。

 データドリブンによる組織の変革、ITの導入、知識のキャッチアップ、すべて経営者が方向性を打ち出し、本気で取り組むことで推進されます。自社は変わる必要はない、なぜならDXにはあまり関係がないから、と思っている経営者の方はいらっしゃるでしょうか。DXは、万人に関係する大変化だと思います。この点を次回から考えます。

* 13 https://ittools.smrj.go.jp/index.html
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