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コラム/ データ活用に関する一考察 第11回

中小企業診断士 福田 美詠子


おわりに ― 持続可能社会へ向けて

◆ 日本でデータ活用が遅れていた理由に、ITを他人事として捉える意識がある

 ここまでをまとめます。
 日本で遅れている「データ活用」について、人によってイメージが違うので類型化を試みたところ、人間の情報行動を習得する教科に対応する7つの型が抽出されました。①言語型 ②体育型 ③家庭科型 ④理科型 ⑤芸術型 ⑥数学型 ⑦社会型 です。データ活用と一言でいっても広い領域に発展していて、それぞれに活用の勘所が異なり、部署や企業にとっても得意不得意がでやすいことがわかりました。
 日本の文化は、ボトムアップ・組織志向・安定志向で、既存の自社領域の探究を得意としますが、新しい業態や技術を開拓しようとするベンチャーには厳しい事業環境でした。これまでのIT業界は、組織維持の必要性もあって発注先企業専用の大規模システム開発受注を主力業務としており、高額な開発コストを負担しきれない中小企業や個人が手薄になっていました。そこに廉価販売や無料使用で最先端機能を提供するGAFAをはじめとする外資が入り込み、特に個人におけるデータ活用を劇的に進めました。個人情報や決済を含む大量のデータが、外資のシステムに日々蓄積されているという状況です。
 DX(経済のデジタル化)も、他業界の動向なので、どこか他人事に捉えられてしまいがちです。

 企業内のデータ活用は、それまでの業務のやり方を壊す面があるために受容されにくいこと、担当業務にフィットするデータ活用型以外に目が行きにくく、とりわけ外部組織との連携を作る⑦社会型が発展しにくいことが指摘されます。
 しかし、アメリカのようにならなくてはデータ活用ができないとは思いません。日本の企業の三現主義のように現実を重んじる態度は、データの示す事実に基づいた経営に向いています。

◆ 日本の強みを活かしたデータ活用構築へ

 目下、データの爆発的増加によって、企業経営のリソースであるヒト・モノ・カネ・情報(データ)のバランスが移ってきました。データの3大機能は(a)認識保存(b)価値再現の核(c)離散的操作 と考えられ、データが「価値」に影響を及ぼし、カネとヒト、カネとモノとのバランスを変えていると思われます。すでに労働市場では働き方改革として噴出し、個人消費においてもシェアやレンタル、リデュース・リユース、体験の擬似化、ポイントによる実売価格の低下が広がっています。
 考えられる方向性として、⑦社会型データ活用への対応が挙げられます。たとえば、モノ(エネルギーを含む物理界)のネットワークであるIoTプラットフォームでの不動の地位確立や、人間のネットワークにおける第3極を形成する分権的で多様性・倫理性を備えたユーザー志向のルール作りです。データ活用の前提となるITについても、自前主義での重厚なシステムの保有にこだわりすぎず、アプリをスマホやタブレットに入れるなどの軽く柔軟なシステムを社会でシェアし、最先端技術を早く安く使用していくことが必要でしょう。

◆ 持続可能社会へ向けて、デジタル化の重大性を認識しよう

 20世紀の大量生産・大量消費では地球環境がもたず、21世紀の持続可能社会に向けて、物理界の負荷を大きく下げつつ人間の満足度は維持向上させていく知恵が求められています。国内市場は高齢社会で、従来の業務でも暫くやっていけるかもしれませんが、地球規模では2020年代から2030年代にかけて大変動が起こると考えられます。紙面も尽きたので論じませんが、生産性が高くて少ない資源で効果的な配分を可能にするIT・データがインフラとなり、社会変革の牽引力になることは疑いありません。データ爆発のなかでカネが変質して、資本主義からデジタル主義へと移行する可能性さえ秘めています。DXは人類史上でも農業革命・産業革命に匹敵し、私たちは歴史的な転換点に立っています。
 質的に変わってきている事業環境をチャンスとして捉え、企業自身も変わり、対応していきたいと思います。IT使用が当たり前の世代が企業の上層部を占め、デジタルネイティブ世代が第一線に立つようになってきました。経済のデジタル化の重大性が認識され、社会的な常識となっていくことが、「すぐできるデータ活用策」の基礎になると考えています。
 日本が新しい時代を切り開くリーダーの仲間入りをして人類の発展に貢献していくよう、各社が、ひとりひとりが、今できることから始めていきましょう。
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